animeとかメインのちゃんねる。現在は悪魔くん(メフィスト2世×エツ子)かな。
悪魔くん*メフィスト2世×エツ子
契約~prolog~
目の前には深夜の空よりも黒いタキシード、
漆黒のマントを身に纏った悪魔――――
「エツ子~、お茶持って来てくれ!」
「はーい」
お父さんが地下室の扉から顔を覗かせ、言い終えるとパタンと扉を締めてしまった。
締切を間違えていたらしく、朝からお母さんと二人あの中。
時刻は既に0時過ぎ。
明日は日曜日。
お兄ちゃんはここぞとばかりに部屋に引籠もって悪魔研究。
私はいつまた呼ばれるか分からないから、茶の間で読み掛けの本を読んでいた。
「そうだ、とっておきの紅茶があったのよね~」
前に頂いた紅茶缶の詰合せの箱を取り出した。
ポットをガスに掛け、二階へと上がる。
「お兄ちゃん、紅茶淹れるけど飲む?」
部屋中に広げられた古文書物らに囲まれた兄が、
「お願いするよ」
と言うとまた書物へと顔を戻した。
「もぉっ…」
いつもの事ながら呆れてしまう。
私は小さな溜息を吐くと、また台所へ戻った。
暫くすると、ポットが音を発ててお湯が沸いたのを報せてきた。
マグカップが二つ、ひとつはお兄ちゃんの部屋に持って行った。
カップを受け取ると、お兄ちゃんは"ありがとう"と笑った。
そのお兄ちゃんの手元には昔からあった古書。
"あれは確か…"
何年も前の記憶が甦る。
「あ、あのね。お兄ちゃん…」
“メフィスト2世さん達とは連絡とってるの?”
「ん? なに、エツ子」
呼掛けてから何も言わない私を不思議そうに見つめる。
「エツ子?」
「ううん、何でもないわ」
頭を横に振ると、部屋を後にした。
バタンと締めたドアに凭れると中のお兄ちゃんに聞えない様に小さく溜息をついた。
忘れてた筈なのに。
忘れ様とした筈なのに。
ふとした瞬間、まるで昨日の事の様にあの頃の想いが甦る。
住む場所が、
住む世界が違うから。
想えば、想う程にあの人との距離を痛感させられた。
お兄ちゃんの様に絶対的な繋がりがある訳もなく。
だから…
諦めるしかなかった。
「エツ子、遅くまでありがとうね。もう寝てもいいわよ」
夜食のラーメンを持っていくと、お母さんが“もう寝なさい”と言ってきた。
私は素直に解ったと返事をすると自分の部屋へと戻った。
隣のお兄ちゃんの部屋からは相も変わらず明かりが漏れている。
「ふわぁぁ」
あくびをひとつ。自室の扉を開けると違和感を感じた。
「???」
パタパタと風にカーテンが揺れていた。
確か閉めたような気がしたけど・・・・
私は窓を閉めるべく、近寄った途端動けなくなった。
窓よりも少しだけ高い位置。
そこには深夜の闇よりも深い、深い黒。
ひらひらとはためく漆黒のマント。
「エッちゃん」
逢いたくて、
逢いたくて、
ずっと想い続けていた。
「・・・・め、メフィ・・・スト2世・・・さ、ん?」
突然すぎて、やっと絞り出した言葉。
あの頃よりも大人びた顔がふんわりと笑う。
「エッちゃん、綺麗になったね」
そう言うと、部屋に舞い降りた。
そして私の手をそっと持ち上げた。
少しだけ私より体温が低いその温もりに現実なんだと実感させられる。
「逢いたかったよ」
「わ、私も・・・・」
ずっとずっと我慢していた想いが溢れるように言葉になる。
「今夜は、エッちゃんにお願いがあって来たんだ」
「私に?」
「今度は君と契約をしたいんだ」
「お兄ちゃんじゃなくて・・・」
「エッちゃんとしたい。俺はエッちゃんの傍に居たいし、君を守り続けたい」
甘いあまい言葉に私のすべてがとろけてしまいそうになる。
黙ったままの私の顔を覗き込むように2世さんは顔を傾けた。
「エッちゃん、返事が聞きたいんだけど」
「・・・はい。・・・わ、私で良ければ・・・」
「では、契約の証に―――――」
そう言った瞬間、今までにないくらい近い距離に彼の顔があった。
そして唇に甘い感覚がした。
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